「社内SEは本当に楽なのか?」を現役社内SEが解説

社内SEの実際

社内SEは楽

 

社内SEに興味のある方なら一度はこの言葉を目にしたことがあるかと思います。ネットで検索しても頻繁に見かけますし、社内SEをやっている私自身もよく「楽そうでいいね」と言われることがあります。

このように世の中的には「社内SEは楽だ」というイメージが先行していますが、果たして実際のところ社内SEは楽なのでしょうか?

 

インターネットで調べてみると、一方では、「情報報システム部門は人数も少ないし、なんでも屋として無茶振りされる上に、給料も上がんない!超絶ブラック!」なんて極端な意見もちらほら見かけます。

その一方で、「社内SEはめちゃめちゃ楽!暇すぎる!この世の天国!」なんて書いている人もいます。しなしながら、その方の経歴をよくよく読んでみると、前職が壮絶ブラックだったり激務コンサルだったりつよつよエンジニアだったりして、環境やスキルが自分と違いすぎて参考にならない場合が多い印象です。

結局のところ、「楽な部分もあれば大変な部分もある、環境による」といった一般論に終始するしかなく、具体的にどんなところが楽でどんなところが大変なのか、実際のところがどうなっているのかが明確に書かれていないことがほとんどでした。

 

過去に自分が社内SEへの転職を検討していた際も、ネット上の曖昧な情報ばかりを目にしながら、自分なんかが本当に社内SEの仕事をやっていけるんだろうか…と不安でたまらなくなりました。

何しろその当時の私にはITスキルがほとんどありませんでした。世の中で言われている「社内SEは楽」というのは高スキルの人の話であって、私のようなスキルも経験もろくにないような人間はどうせ社内SEなんてやっていくのは難しいんだろうな…
そもそも一人社内SEという言葉があるように少数精鋭である必要があるため、スキルの無い自分なんかがなれるわけないよな…と悲観的に考えていました。

 

そこでこの記事では、スキルの無い状態で社内SEになり、現役で社内SE業務に従事している私が、「社内SEは本当に楽なのか?」ということを掘り下げて解説していきます。

社内SEは本当に楽なのか?

社内SEの仕事って、本当に楽なんですか?

 

この疑問に対する結論を先に言ってしまいますと、

社内SEは本当に楽です!断言します。

 

それでは、何をもって社内SEが楽だと断言するのか?について掘り下げて理由を説明していきます。

社内SEが楽である4つの理由

私が社内SEを楽であると判断する理由を4つ挙げます。

・仕事の絶対量が少ない(仕組み化することで仕事量を減らせる)
・仕事への責任が軽い(ベンダー側とは責任の取り方が異なる)
・成果が必要ない(売上や利益率などの分かりやすい指標がないため、目標達成に追われる心配がない)
・スキルが無くても大丈夫(自分にできないことは外部へ委託することもできる)
これが社内SEが楽であると判断する根拠です。
それではこの4つの理由について1つずつ順番に詳しく解説していきます。

「社内SEは楽」である詳しい解説

社内SEが楽な理由1.仕事の絶対量が少ない

社内SEが楽である理由の1つ目は、仕事の絶対量が少ないことです。
正確に言うと仕事量は少なくはありませんが、仕組み化しやすい仕事が多いためです。
なぜ社内SEの仕事量がそれほど多くないのか?それは社内SEの仕事の特性にあります。

社内SEの楽な仕事:ヘルプデスク業務

社内SEになったら避けて通れない業務の1つとして、「ヘルプデスク」業務があげられます。エンドユーザからの問い合わせに対応することですね。
ここでいうエンドユーザとは、社内のすべての人間(営業・エンジニア・事務職・派遣社員・社長などなど、パソコンや社内システムを使う人全員)を指します。

 

多くの社内SE業務では、まずはヘルプデスク業務を通じて会社全体の仕事の流れを把握することが多いでしょう。ヘルプデスクの仕事は地味ながら重要であり、縁の下の力持ち的な存在です。

そんなヘルプデスク業務は突発的に発生するものであり、ユーザから「緊急で対応する必要がある」と言われれば、今やっている作業を中断してでもすぐにでも取り掛からなければならないこともあります。そのため、事前に予定を立てておくことができません。

 

しかしながら、問い合わせの多くはその場で解決できることがほとんどです。
例えばこんな問い合わせが多いです

  • インターネットに繋がらない → LANが抜けてる
  • キーボードがおかしくなった → NumLockを押して戻せなくなった
  • ログインできない → パスワード忘れかNumLockのどちらか

 

「こんなの当たり前でしょ!こんなこと問い合わせするやつなんているわけない!」と思われるかもしれませんが、悲しいかな世の中の一般的な会社ではこれが普通なのです。

そしてこれらは一度マニュアルを作ってしまえば、次回は同じ問い合わせが来たらマニュアルを案内するだけで終わります。

ちなみに「問い合わせする前にマニュアル見ろよ!」とも思いますが、意外とエンドユーザは自分からはマニュアルを見てくれません。これを改善するにはユーザの意識改革を行う必要がありますが、なんでもかんでもマニュアルを見ましょうという流れになるとメンテナンスも大変になってしまうたあまりお勧めしません。

社内SEの楽な仕事:ルーティンワーク

社内SEの仕事というのは、週に1度や月に1度だけというようなルーティーンワークが結構多いです。

例えばWindowsUpdateなどもその1つです。

WindowsUpdateの際はネットワークに負荷がかかったり、更新プログラムの不具合により端末が起動しなくなるなどのトラブルが起きることもしばしばあり、問い合わせが増える傾向があります。

このような発生すると分かっている事象に対しては、いくらでも事前に対策することができますので、トラブルが発生しないような仕組みを作ってしまうことで、トラブル対応にかかる負荷を回避することができます。

(WindowsUpdateについては、私がどのような仕組み化をしているかは別の記事でまたの機会に書きたいと思います。)

 

また、社内SEの仕事は、安定的にシステム環境を提供するということが仕事の1つですので、月に1度くらいの頻度でシステムが安定稼働しているかの定期チェックを行います。

ファイルサーバやメールサーバのドライブの空き容量の推移をチェックしたり、インターネットの負荷状況をチェックしたり、イベントログからエラーが出ていないか、スパムメールのすり抜け率など様々な観点から確認を行い、とりまとめてレポートを書き起こしています。

このようなデータを取得してレポートにまとめる作業は、手作業でやっていると時間ばかりかかってしまいますが、一度自動化したやると次回から何もしなくても勝手にレポートが出来上がります。

 

逆にシステムに突発的な障害が発生した場合には、すぐにでも対応する必要があります。このような突発的に発生するシステム障害にも対応できるだけの余裕をもったスケジュールを組んでおく必要があるといえるのです。

 

社内SEが楽な理由2.仕事への責任が軽い

私は社内SEになる前はソフトウェア開発の仕事をしていましたが、そこでは仕事の責任がとても重いものでした。

プロジェクトが遅延してしまったり、稼働後の不具合により業務を止めてしまった場合の影響度が多きすぎて、ただの若手平社員にもかかわらず常に責任が重すぎました。

この常に責任が付きまとうということで、精神的に疲弊していた部分が大きかったと思います。

 

社内SEとして仕事をする上で、ベンダー側と最も大きく違うのはこの点かもしれません。
社内SEに責任がないわけではありません。しかしベンダー側にいた頃に感じていた責任と比べると、比較できないほどに楽です。

 

例えば業務システムの開発1つとっても大きく違います。基幹システムの開発は外部ベンダーへ委託をしていますが、この開発プロジェクトに遅延が発生したとします。
この時、ベンダー側は上司からもお客さんからもプレッシャーをかけられます。

 

その時の精神状態としてはこんな感じ。

なんとかしてプロジェクトを軌道に乗せなければやばい!サビ残や休日出勤なんていくらでもするからなんとかしなきゃ!ああああうまくいかない、あああああああどうすればいいかわからない…
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい…..

夜も仕事の夢をみてうなされ、朝会社にいくのが本当に嫌でした。

 

一方、委託する側である社内SE側の心境はこんな感じです。

ちょっと遅れてんなー、まあバッファとってるから最悪リスケすればいいか、とりあえずここらでベンダーさんのお尻叩いて、プレッシャーかけておいた方がいいかな

あーリスケになっちゃったわクソ、ベンダーさんから報告書もらって部長に報告しなきゃ、あと業務部門の偉いさんにも裏でちょこっと根回ししとくか、あ、今日飲み会だっけ早くあがろっと

 

同じプロジェクトの遅延をとってみてもこのくらい心境が違います。

この精神的な負担の軽さが、社内SEが楽といわれる最大の理由だと考えています。

社内SEが楽な理由3.成果が必要ない

社内SEの仕事は目に見える成果の指標がありません。

例えば営業ならば四半期毎などの売上目標があり、その目標を達成することが成果として評価に繋がります。
ベンダーSEも同様です。プロジェクトの受注額に対して維持しなければならない利益率が定められており、その範囲内でプロジェクトを遂行することが成果として評価されます。(ちなみに基準となる利益率を割ってしまう場合はサビ残を強いられることもあります)

 

一方で、社内SEの仕事は利益を生みません。そのため、目標金額や利益率といった分かりやすい達成目標という評価の指標がありません。

あっても残業時間をいくら減らせたとかそんなもんです。あとは業務システム導入によって事務手続き30%効率化することに成功しました、これは年間の金額として1億円に相当しますみたいな導入効果分析とかしたりしますけど、あれば作りようによってどうにでもなりますし、そもそも経営者からしたら本当にシステムにおかげなのか目に見えないため評価には繋がりません。
このような理由から社内SEという仕事では、成果に追われることがありません。
これも社内SEが楽だという言われる大きな理由の1つといえるでしょう。

社内SEが楽な理由4.スキルが無くても大丈夫

社内SEはスキルが無くても大丈夫です。スキルが無くても務まります。
それはなぜでしょうか?

それは、自分にスキルが無くてできないことがあるのであれば、その仕事を外部へ委託すればいいからです。

そんな何でもかんでも外部へ委託できるわけないじゃんと思われるかもしれませんが、それが意外とできるもんですよ。これは私自身も実際に入ってみて驚きました。
社内SEに解決できない仕事ことは、社内の他の誰にも解決できないということを意味します。その仕事が本当は大した難易度ではなかったとしても、社内にはその仕事がどのくらい難しいのかも判断できないのです。
何でもかんでも社内SEだけで対応できるわけはありません。どんな会社であっても、ここまではシステム部門(社内SE)が対応する、これ以上は外部へ委託するという線引きは必ずあります。そしてその線引きの基準を正しく設定できる人は少ないのです。
会社として対応しなければ業務影響が出る問題を放置するわけにはいかないので、システム部門(社内SE)のスキルが足りなければ外部委託して解決するしかありません。
「外部委託はだめだ!お前がどうにかしろ!」なんて個人を追いつめられることなんてありません。そんな会社はほとんどありませんし、もしあったとしたらそれはパワハラですので労基に行くか転職を考えましょう。
まずは1度外部に委託してみて、どんな作業してるのか詳しくチェックして自分でもやってみる。そしてできるようになったら次から自分でやればいいんです。
上記から社内SEはスキルがなくても務まると言えます。
もしこれがベンダー側の立場だとしたらスキルがなければ仕事にならないし、上司からは叱られるし成り立たないですよね。
これも社内SEは楽だといわれる理由の1つだと思います。

結論:社内SEは楽です

正直、社内SEは楽です。
ただし、心掛けというか注意点が2つあります。

社内SEとして大事な心掛け

ひとりで背負わないこと

1つ目は、なんでも一人で背負わないこと
エンドユーザはあなたがどのくらいデキル人なのか知らないし、依頼しようとしていることがどのくらい高度なスキルが要求されることなのか分かっていません。ですのでどんな内容であっても平然と頼んできます。
別にあなた自身が対応する必要なんてこれっぽっちもないのです。あなたができることはあなたがやればいいし、あたなにできないことが外部に委託すればいいのです。
たまに見かける、「なんでもかんでも頼まれるのでつらい・忙しい!」という主張はだいたいこれです。自分で仕事の割り振りができない人が、言われたからといって勝手に背負い込んでいるだけです。

エンドユーザには親切にすること

ヘルプデスク対応でお偉いさんのわがままなどへ対応とかしてたら、「どうでもいいこと依頼してくんなよ面倒くさいなー」とは「こんなこともわからないのかよ頭悪すぎ」とか思うことがあると思います。
そんな時であってもエンドユーザとは親切にして、良い関係を築いておきましょう。
商売の世界では「お客様は神様です」って言葉もありますが、社内SEにとってはエンドユーザこそがお客様です。別にエンドユーザを神様のようになんでも従えとか、エンドユーザからいいように使われて当然ということを言いたいのではありません。
社内SEは利益を生み出していません。社内SEの給料の出どころは、エンドユーザの売上です
社内SEは成果がありません。社内SEを評価してくれるのは、エンドユーザです。
社内SEが仕事で失敗した時に最終的に尻を拭いてくれるのは、エンドユーザです。
極論を言えば、この2点だけわきまえていれば社内SEの仕事は務まります。そのくらい社内SEの仕事というのは「楽」な仕事なのです。

楽な社内SEに興味が湧いた、転職してみたいと思われた方は、転職に関する記事も参考にしてみてください。

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